日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 6巻2号 pp. 82-89
2009.3.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615


再生医療機器の国際および国内の標準化動向

1日本大学歯学部, 2大阪歯科大学歯科理工学講座

堤 定美1. 今井 弘一2


 組織再生に関する国際標準は,これまでの既製品との互換性の重要視や,市場実績がある業界標準の経験をもとにした,いわゆるde facto規格とは性質を大きく異にしている.再生医療に係わる組織工学製品の規格は,これからの新しい医療機器創製の指針を正しく導くための憲法的ルールである科学的根拠を重視した,いわゆるde jure標準であるので,規格作成の意義と手順は大きく異なっている.一方で,組織工学製品を研究開発段階から事業段階へと展開することこそ再生医療の発展を促す駆動力となる筈であり,現に幾つかの製品が国の審査を待っている状況を鑑みてISO/TC150では新しく小委員会SC7(再生医療用具)を設けて,標準化の活性を促すように日本が提案した.2007年4月にSC7設立が承認され,日本が幹事国に就任した.さらに,標準化は官界の法規や許認可規制,保険適用条件などと規格との整合性の確保にも努める必要があるので,多くの分野の専門家を含めた産官学グループの標準化推進団体の創設と意見集約を実行しなければならない.有効でより安全な再生医療機器をより早く患者さんに届けるためには,医療機器の標準化・規格化のBenefiteとRisksを正しく天秤にかける必要性がある.医療機器の標準化し,規格化することのBenefiteは共通試験・評価による信頼性・効率化の向上であり,国際市場との整合性も高くなる.しかし,Risksは,新規開発の阻害や必要最低条件に合わせる技術目標の低下が発生する可能性もある.一方,医療機器を標準化し,規格化することについて,誰が行うのか? どのように行うのか? 業績評価は?などの重要な問題点ついても総意を纏めて解決される必要がある.


キーワード:国際標準,組織再生, 医療機器, ISO/TC150/SC7, ASTM, JIS

(総 説)


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