日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 5巻2号 pp. 94-104
2008.3.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615
次世代歯科治療である「歯の再生」研究の戦略と展開
1
東京理科大院・基礎工・生物工,
2
東京理科大・学術フロンティア再生工学研究センター
池田 悦子
1, 2
,中尾 一久
1, 2
,辻 孝
1, 2
傷害や病気による臓器の機能不全に対して,幹細胞を移入する再生医療が確立されつつある.再生医療の最終的な目標は,損傷した臓器や器官を正常に機能する再生臓器と入れ替える臓器置換再生医療の実現であろう.歯科領域においては,喪失した歯をブリッジやインプラントなど人工歯で補う治療方法が確立している上に,細胞操作によって歯胚を再構築して第3の歯を創り出す「歯の再生」が取り組まれており,歯は器官再生研究として最も研究が進展している器官である.最近,私たちは,単一化した歯胚由来細胞から,正常な歯胚と同様に発生可能な再生歯胚を作製する細胞操作技術を開発した.さらにこの再生歯胚は,成体口腔内環境で正常発生することを明らかにした.「歯の再生」の実現には,患者に由来する幹・前駆細胞を用いた歯の作製技術や形態の制御,治療期間の短縮など,多くの技術開発が必要である.さらに「歯の再生」に向けた技術開発は,他の臓器や器官の再生に応用可能性が考えられ,次世代臓器置換再生医療のモデルとしての「歯の再生」研究の推進が期待される.
キーワード:
歯の再生,臓器置換再生医療,細胞操作技術
(総 説)
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