日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 3巻2号 pp. 100-113
2006.3.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615


組織工学手法(CHA,PRPおよび骨髄の混合移植)を用いた4ヶ月後のサイナスリフトの組織形態学的検討

1日本大学松戸歯学部組織・発生・解剖学講座
2九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座生体材料工学分野
3大阪大学大学院歯学研究科顎病因病態制御学講座口腔外科学第二教室
4日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
5長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻発生分化機能再建学講座齲蝕学分野
6高知学園短期大学医療衛生学科歯科衛生専攻
7明海大学歯学部口腔解剖学分野
8ニューヨーク大学歯学部生体材料学・生体模倣技術分野

大久保 厚司1,下御領 良二2,井上 正朗3 ,千坂 英暉1,鈴木 久二博1,辻本 恭久4 ,空閑 裕紀5,松永 常典5, 三島 弘幸1,6,山本 仁1,筧 光夫7 ,寒河江 登志朗1,小澤 幸重1,Racquel Z. LeGeros8


 上顎洞底粘膜挙上術(サイナスリフト)において,上顎骨が約 1〜2mm(分類SA 4)の挙上は洞底粘膜や毋床骨からの血流は乏しく,粉砕自家骨を用いても充分な骨量を確保できない場合がある.
 臨床医として施行可能な範囲で,組織工学の原則である腸骨より体性幹細胞,足場として CHA(carbonate apatite)と自家粉砕骨を混ぜたもの,成長因子としてAPC-PRP(Auto Platelet concentration Platelet Rich Plasma )の3要素を用いて,サイナスリフトを施行した.4ヶ月後,口腔インプラントを埋入時に内径2〜3mmのフライスドリルを用いてD2程度に造成された新生骨をブロック状で採取することが可能であったため,これを用いて組織学的検討をおこなった.
 最も骨造成を必要とした|部の成熟骨化率は40.15%,新生骨化率は6.40%,骨占有率は46.75%以上の石灰化があった.骨髄相当部では残留していた一部のCHAと骨の間においては,血管系は少ないものの,CHAは一部吸収され,その周囲には整然と骨芽細胞様細胞が配列されている組織観察が得られた.インプラント上部構造装着後,15ヶ月経過するが予後は良好である.
 以上のことからコラーゲンT型,結晶核として Ca2+,CO32-,PO43-等のイオンの介在の可能性,CHAによるpHの調整,骨造成蛋白の発現の制御を検討した.

キーワード: サイナスリフト,CHA(カーボネートアパタイト),APC-PRP (自己血小板濃縮多血小板血漿),骨占有率,結晶化

(原著論文)


日本再生歯科医学会ホームページへ