日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 3巻2号 pp. 92-99
2006.3.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615


Mineral Trioxide Aggregateによるイヌ歯髄覆髄への組織学的考察

1日本大学松戸歯学部組織・発生・解剖学講座
2日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
3九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座生体材料工学分野
4高知学園短期大学医療衛生学科歯科衛生専攻
5大阪大学大学院歯学研究科顎病因病態制御学講座口腔外科学第二教室
6長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻発生分化機能再建学講座齲蝕学分野

大久保 厚司1,辻本 恭久2,川島 正2,下御領 良二3, 井上 正朗5,空閑 裕紀6,松永 常典6,三島 弘幸1,4 寒河江 登志朗1,小澤 幸重1


 Mineral Trioxide Aggregate(MTA)粉末に含まれる結晶の微量成分をSEM-EDS分析により,Ca,P,S,Mg,Si,Alを検出し,これらの元素のほとんどは,歯根の成長と熟成にともなうSiとAlがCaとPに置換される重要な元素であり,象牙質もしくは象牙前質の石灰化機構時に出現する微量元素と類似していたことを先に報告している.
通常,生活歯髄断髄の処置にFC固定,ヨードカルシウム製剤,水酸化カルシウム製剤が用いられているが,必ずしも良好な予後は期待できない. 生活歯髄切断後の直接覆髄材として,象牙質石灰化元素を有するMTAをイヌ歯髄と根尖部への影響を実験した.イヌ動物実験では6週において,MTAはセメント様石灰化を形成し,その直下で歯髄はほぼ正常な状態で存在した.また,8週は歯髄組織内にMTAが介在するも,一部充血が観られるだけで炎症の拡炎はなかった.比較の水酸化カルシウムによる直接断髄はデンテインブリッジを形成するものの,直下では空胞変性や炎症生細胞も一部観られた.全ての群において根尖部組織への影響は無かった.
 これらの結果からMTA成分は生体反応を調節していき,生活歯髄断髄後の覆髄剤としての有用な成分であることが示唆された.

キーワード:MTA(Mineral Trioxide Aggregate),生活歯髄切断,歯髄覆髄

(原著論文)


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