近年の歯科医療におけるMinimal Intervention(MI)の概念から,齲蝕の進行した症例において,可及的に歯髄を保存し,積極的に失われた硬組織を再生することは重要な課題である.現在までに水酸化カルシウムや接着性レジンを用いた覆髄法や,抗菌剤を応用した覆髄法が提唱され,臨床成績が報告されてきている.今回我々は生物学的覆髄法を開発するにあたり,硬組織誘導において重要な成長因子として報告されているConnective Tissue Growth Factor(CTGF)に着目し,ヒト歯髄細胞に対する分裂増殖に対する影響ならびに象牙質基質タンパクの一つであるオステオネクチンの発現に対する影響について免疫組織化学的手法を用いて解析を行った.倒立顕微鏡による観察の結果,無血清培地における培養と比較してCTGFを添加した場合,種々の成長因子が含まれている10%FBSを添加した場合と同様に顕著な歯髄細胞の分裂増殖が観察された.このことから,CTGFは単独でも歯髄細胞を分裂増殖させる機能を有すると考えられる.免疫組織化学的解析の結果,CTGF刺激により増殖がみられた歯髄細胞においてオステオネクチンの顕著な発現が観察された.このことから,CTGFは歯髄細胞において象牙質基質タンパクの一つであるオステオネクチンの発現を誘導する機能を有すると考えられる.
キーワード:象牙質再生,CTGF,オステオネクチン
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