日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 1巻1号 pp.36-46
2003.12.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615


IL-1β,TNF-α刺激がヒト骨芽細胞様細胞の細胞外マトリックスタンパク質mRNA発現 におよぼす影響

大阪歯科大学大学院歯学研究科生化学専攻1,生化学講座2,高齢者歯科学講座3
吉川美弘1,鎌田愛子2,堂前英資1,合田征司2,川本章代3,小正 裕3,池尾 隆2


 歯槽骨は歯周疾患などの炎症性疾患で著明に吸収される.これは破骨細胞による骨吸収の促進または骨芽細胞の骨形成能低下によるものと考えられる.私たちは骨形成能の変化に注目し,骨芽細胞の石灰化に関与するマトリックスタンパク質合成能の変化について検討した.
 IL-1βまたはTNF-αで刺激したヒト由来骨芽細胞様細胞株であるSaOS-2からRNAを抽出し,アルカリホスファターゼ(ALP),Ι型コラーゲン(COL1), オステオカルシン(OC),オステオポンチン(OPN)およびデコリン(DEC)のmRNAの発現をRT-PCR法で確認するとともに,real time RT-PCR法で定量的に解析した.その結果,IL-1βまたはTNF-α刺激により,無刺激のコントロールに比べ, ALPおよびCOL1のmRNA発現は24時間後に,OCでは48時間後に有意に低値を示した.一方,OPNおよびDECの mRNA発現は炎症性刺激により経時的に増加し,24時間後で有意に高値を示した.以上の結果は,慢性炎症状態にある歯槽骨骨芽細胞の骨形成能は常時抑制されていることを示唆するものと考えられる.

キーワード:骨芽細胞,細胞外基質,炎症



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