日本再生歯科医学会誌(略称:再生歯誌) 1巻1号
2003.12.30
Journal of the Japanese Association of Regenerative Dentistry
(J Jpn Assoc Regenerative Dent)
ISSN 1348-9615
巻 頭 言
岡山大学大学院医歯学総合研究科歯科保存修復学分野 吉山 昌宏
去る平成15年10月14日に岡山大学歯学部に於きまして、第一回日本再生歯科医学会総会ならびに学術大会が100名を超える学外からの大学研究者、民間企業研究者、臨床家ならびに学内から100名以上の参加者の下、盛況かつ熱気を帯びて開催するとともに、日本再生歯科医学会が無事に船出することが出来ました。これも偏に皆様方の厚い支援のたまものであると深く感謝いたします。
今まさに医学界は再生医療の開発臨床応用に向けて大きく舵を取ろうとしています。また、産業界もバイオベンチャー企業を数々設立し、種々の新しい再生医療技術を開発したと喧伝しており、まさにITバブルに次ぐバイオバブルの状態にあるといえます。
歯学界におきましても、従来の歯科材料を用いた古典的充填や義歯などの治療から、生物学的な歯科再生医学への転換がなされようとしています。また、歯胚再生技術の開発をうたった寄附講座やバイオ企業の設立も相次いでおります。このような状況の中で、私共があえて日本再生歯科医学会を立ち上げましたのは、再生歯科医学というものがまったく新しい研究領域であり、学術的研究領域として幅広い分野の研究者が一堂に会して忌憚のない議論を重ねる場が不可欠であると考えたからであります。一部のカリスマ的研究者と特定の企業によるいびつな発展ではなく、純粋に歯科医学の再生を望み国民の安心できる再生歯科医療を出来るだけ早急に確立しようとするのが、本学会の第一の目的であります。本学会のもう一つの目的は、再生歯科医学の健全な発展のために安全性および信頼性の指針を示すガイドラインを作成することに寄与することであります。また、あまりにも医療費が高額である場合には、限られた国民しかその恩恵にあずかれないことになります。従いまして、再生歯科医療が経済的にも優れ医療保険の給付対象となるように努力することも本学会の役割として重要であると考えております。
従来の歯科医療があまりにも歯科材料に足場を置きすぎたことが現在のような歯科界の停滞を招いた一因と考えております。しかしながら、一部マスコミで宣伝されるような再生医学万能といった近未来図はおそらく非現実的であり、「再生と再建の調和(ハーモナイゼーション)」こそ本学会が目指す歯科医学の近未来像であります。
「日本再生歯科医学会」は、今まさに船出したばかりであり、日本あるいは歯科界で認知されるような学会に発展していくためには、いくつもの大きな壁や困難を克服してゆかねばなりません。たとえて言えば、太平洋横断に乗り出した勝海舟率いる咸臨丸といったものかもしれません。従いまして、皆様のご助力、ご助言こそが大きな追い風であります。
このたびの日本再生歯科医学会雑誌第一巻和文誌の発行は、第一回総会および学術大会の開催に次ぐ大きなステップであります。今後のステップとして、英文誌第一巻の発刊と第二回総会を、北海道医療大学歯学部の斉藤隆史教授のもとに、来る平成16年9月上旬に札幌市で開催を予定しています。
今後とも皆様方の温かいご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
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